ピンク色の

私が私でいられるように書きます。

呪い

一番好きなセフレが帰ったその夜、ベッドに入ったら枕にセフレの匂いが残っていた。

最近は誰と寝ても寂しいとか何にも感じなかったのに、今回だけはすごく寂しかった。きっと一人暮らしを始めたせいだ。
恋愛感情があるわけじゃないけど、タメなこともあってか、猫被らなくていいし楽だ。勝手に軽い友達くらいに思っていた。
すれ違ったら「おつかれ~」って言うくらいの。

でもなんか変だな、最中ってなんで恋人みたいになるんだろうか。普段は絶対してこないくせに、後ろから抱き着いてくるし、
その時だけは優しい声で話してくれる。
私だって、普段はロクにLINEも返さないくせに、その時だけはくっついていたくなる。

あいつは他にも遊んでいる女の子がいて、だいぶ年下ですごく好かれているらしい。2週間に一度は会っているらしいし、電話も毎日しているらしい。
ずっとこのままだったら、その子と結婚しようかなぁなんて言ってた。死ねばいいのに。

あいつは自分のことが好きな女が好きだから、そんなことは知っているけど私はあんな奴に嘘でも好意を向けたくないと思う。
好意を向けなくても会ってほしいんだ。会ってめちゃくちゃなセックスがしたいんだよ。

あいつと付き合いたいとか思わないし、恋愛感情があるわけでもない。
でもそれでも、今この時だけはお願いだから私だけを見てほしかった。
他の女の子との惚気も聞きたくなかったし、もっと私の中身にも興味を持ってほしかった。

自分が透明のように感じた。細胞壁しかないような、空のペットボトルのような、メレンゲのクッキーのような。

あいつが帰ってから、現実に戻りたくて、会う日の朝から我慢していたタバコを吸った。

夜、寂しかった。そこから色々なことを考えていたら沼にはまってしまい、泣いた。
選ばれなかった虚しさと、愛されなかった寂しさと、一生埋まらない空虚。

一番好きだった元カレに浮気されて、好きだって言ってくれたあの男にもやり捨てられて、私は選ばれない女なんだとわかった。
身体なしでは、いや身体があっても愛してもらえないんだと思った。

選ばれなかったという事実はずっと呪いのようにこれからも自分を蝕んでいくんだと思う。
誰かに必要とされたい、愛されたい、私じゃなきゃだめだと言ってほしい。
身体を許せばそれまでだけど、許さなければ使えない女だと言われるし。

もっと真っ当に生きていればこんなことにはならなかったのか。
明るくてコミュニケーション力があって顔も性格もよければみんなから愛されたのだろうか。

愛されたい。
自分すら愛せない奴がそんなことを言うのはおかしいけど、愛してもらえないと自分で自分を愛せないんだよ。

誰かを愛せるようになりたい。

あいつが置いてった歯ブラシで排水溝の掃除でもしてやろうか